FORWARDとは
FORWARDは2009年に、東京都練馬区は西武池袋線・石神井公園駅前に開校した塾です。それ以来、決して多くはありませんが、幅広い年齢の子供たち、時には大学生や社会人の方にも学びの機会を提供してきました。西武池袋線沿線に限らず、時にインターネットを介して、遠い地域や海外に住む複数の子供たちも含め、ご指導に当たっています。
石神井公園駅前に開校した「塾」と書きましたが、所謂「補習塾」「受験塾」「予備校」といったものに対しては、私たちは違和感を抱いています。教育が一番大切にすべき事は何でしょうか。少なくともテストの点ではないでしょう。難しい学校に合格することでもないでしょう。それらは、これから大人になっていく子供達の、現在の知力は保証してくれます。しかし、その後も成績が保つとは限りませんし、ましてや試験で測れる知力だけで、その人の全てが決まるわけでもありません。子供達は受験が終わった後も、それぞれの人生を生きていきます。その長い人生において、今回の試験の点が、どれほど頼りになるのでしょうか。本当に「学ぶという事」そのものに興味がなければ、そして自分に自信を持ち、周囲の人と良い関係を築けなければ、受験に合格した後、ずっと自己を研鑽し、自分の幸せをつかみ、周囲を幸せにできるようにはならないでしょう。私たちは、私たちの生徒が次の定期試験で良い点を取る事だけでなく、生徒が私たちの手元を離れ、上級の教育機関に進学し、あるいは社会に出てからも、良い人生を歩める事を願っています。そのために、私たちは何をすべきか、何をできるかを考えています。
私たちは常に学び考え続けることを大切にしています。生徒達が学び考えるだけでなく、塾で教育に携わる私たち教師自身が、否、すべての大人が、常に学び考え続けるべきだというのが私たちの意見です。
より深い知識を学び、私たちの社会がどう変化していくか考える中で、また人間のあるべき姿について学び考える中で、FORWARDの在り方は少しずつ変わっています。FORWARDはこういう教育をする、と本欄に書いても、年が改まる頃には、より生徒達のためになるように、方針を変えているかもしれません。ですから、学びの場を探す方のために「FORWARDとは何か」という疑問にここでお答えすべきとは思うのですが、あまり明確な事は書きにくいというのが正直なところです。執筆時点で言える事は、今のところ、個別指導と集団講義を組み合わせて、小学生から高校生まで(稀に大学生や社会人にも)教育を行っている、一般的な定義からすれば、所謂「塾」に分類されるだろう、という事くらいです。はやく「もはや塾ではない」と言い放つなり、「塾の定義を我々が変える」と宣言するなり、してしまいたくはあるのですが……まだそこまでは達していないか、というのが現時点での自己評価です。
FORWARDは小さな塾です。社会人の、ほんの数人の同志達のみで教室を運営し、生徒指導に当たっています。建学当初は東大生を多く雇用している事を売りにしていましたし、今でも稀に何かの縁や教科知識の必要性から優秀な学生を選別して採用する事もありますが、大手の個別指導塾のように、学生アルバイトを主力に据えた教室運営をする予定はありません。
友人達からは「生徒の募集を停止するほど人気があるなら、部下を教育するなりノウハウをまとめるなりして多店舗展開したらどうか」「リーダーが自分で現場の仕事をしている限り大きくはなれない。思い切って部下に仕事を任せていくべきだ」といったアドバイスをよく貰います。生徒から「教室が自宅から遠い。近くの駅に二店舗目を開く予定はないか」と冗談交じりに言われたり、父兄の方から「先生が小さな塾の教師であることに甘んじているのは勿体無い」といったお言葉を頂いたこともあります。高く評価していただける事は有難く思いますし、大きな組織には大きな組織ならではの強みがありますから、FORWARDを「大きな塾」にすることに興味が無いわけではありません。生徒の通いやすい場所に教室を持つ事も考えたいとは思います。
しかし、私たちは教育というものが、組織によって行われるものではないと考えています。本当の教育とは、人と人が向き合う中で行われる実践です。教師はそれまでの数十年の全人生を踏まえて生徒と向き合うものです。ですから「ノウハウをまとめる」という事が簡単に出来る事とは思えず、また部下を育てるのも二年や三年で実現する事ではないと考えています。よほど素晴らしい出会いがなければ、私たちの教育実践に参加してもらう新たな仲間を迎え入れるのは難しいというのが、目下の私たちの判断です。恐らくまだまだ、私たちは少人数で、小さな教室を運営し続けるでしょう。FORWARDは少なくとも当面の間は、小さな塾であり続けます。
FORWARDは明確なカリキュラムや、全生徒共通の教材というものを持ちません。決まった教材とカリキュラムを充てがって、そこから外れる学習者に対して無策な既存の教育システムに対するアンチテーゼであることは私たちの存在理由の一つですから、生徒を教師の定める枠組みに押し込むことは、なるべく避けたいと考えています。勿論、私たちも子供一人一人に対して、常に完璧な最高の提案ができる訳ではありません。しかし、少なくとも生徒一人一人の佇まいを見つめて、より適切に寄り添い、より力強く道を示し、より的確に問題を指摘し、一人でも多くの子供達に人生の役に立つ何かを手渡し、望むらくはその生徒が、傍目にも、生徒自身の自覚においても、良くなる手助けができるように、生徒にとっての善であるように、願っています。そのためにある程度の見通しを示したり、教材の提案をすることはありますが、基本的には「カリキュラム」「計画」というもの自体、本質的ではないと考えています。計画があると良いと思ったら計画を示しますし、計画が邪魔だと思ったら計画を立てたことに慢心するなと戒めます。
FORWARDは、それが仮に塾と呼ぶしかないものであっても「塾である事を超えようとする塾」であり、「受験や学科試験を超えて、教育・学びというものを考える塾」です。いわゆるペーパーテストで点を取る事は当然の事として、勉強に対して、ひいては人生において出会う様々な物事に対して、前向きな気持ちで向き合っていく姿勢を涵養する事を目標に掲げています。そのような姿勢があってこそ受験においても余裕を持って最難関に合格する事ができ、また受験を終えた後も手にした学びの機会を存分に活かし、人生において幸せを掴み、あるいは人を幸せにし、社会に貢献できる人材となれる。私たちは、そのような教育を通じて、社会をより良いものに変えていく事を目指し、日々の学習指導に取り組んでいます。